プロ野球生活 2010年 65試合登板+1 外野手西村
プロ2年目
阪神タイガースに6年間在籍させていただいた中で、
プロ2年目の2010年は、自分でも想像できないほど、1軍でプレーさせてもらいました。
開幕2戦目に、中継ぎに転びこんできたプロ初勝利をさせてもらい、
そのまま、65試合も登板させてもらいました。
この2010年は私の野球人生の中でも、最も刺激的な1年でした。
登板した試合はすべて印象深いものではありますが、
すべての試合のことをここに書くことは難しいので、
特に印象に残っている試合や出来事なんかを書かせてもらいます。
ほぼ1年間1軍に帯同させてもらい、
そこで経験した1軍での生活のリズムや、過ごし方なんかも書いていきます。
5月1日
2010年5月1日は巨人との『伝統の一戦』でした。
阪神対巨人と言えば、プロ野球ファンなら誰もが知っているであろう、
伝統ある対戦カードで、
私自身もプロ野球を見始めた頃から『伝統の一戦』という言葉は知っていました。
プロに入ってからも、巨人戦となるとより気合いも入るし、
周囲がピリついていることも感じていました。
その日の出番は、
7-4でリードしている展開で、
6回の表、それまで好投していた先発投手がつかまり始め、
ノーアウト2、3塁の場面でした。
巨人打線は1番からの好打順でした。
私は、その場面で起用してもらったことがとても嬉しくて、
飛び切り気合いが入っていました。
気合が入りすぎて先頭バッターに四球を与えてしまい、
ノーアウト満塁。一発逆転の大ピンチにしてしまいました。
しかし、その当時の私は、その四球で逆に冷静になることができました。
一発逆転なんてことは頭に一切なく、
「内野ゴロならダブルプレーで一気にツーアウトだな。2,3塁より守りやすいな」
と、思っていました。
今でもあの時のマインドは自分でも不思議に思います。
今もし、テレビで同じ場面を見ていたら、
ヒットで1点差、長打で同点、一発なんか打たれたら逆転。
押し出しもあるからボール球も投げれない。
と、マイナスなことばかり考えてしまいます。
しかし、あの時は不思議と、全くマイナスな考えが出てきませんでした。
むしろ抑えるイメージが無数に湧いてきていました。
バッターの仕草、間の取り方、味方守備の方たち表情、城島さんのミット、
とても冷静に周りも見えていました。
その結果。
セカンドフライ、三振、三振、と、
大ピンチを乗り切ることができました。
この日はストレートの調子としては、そこそこで、
どちらかと言えば、シュートのほうが感覚もよく、特に左バッターの外角にはよく決まってくれました。
その日タイガースはそのまま勝利を収めることができました。
そして、その時もヒーローに選んでいただき、
ヒーローインタビューを受けることになりました。
この時の映像は、YouTubeにものせてくれているので今でもよく見させてもらっています。
あの時のファンの一球一球に対するリアクション、アウトを取った時の大歓声。
ヒーローインタビューの時にはとても暖かい声援。
あの日ほどタイガースファンの心強さを感じたことはありませんでした。
私は、あの時の感動を一生忘れることはないと思います。
本当にありがとうございました。
9月9日
その日は甲子園球場で、中日ドラゴンズとの首位攻防戦でした。
9回まで1-2で負けていたのですが、
9回の裏に1点をとって同点に追いつき、延長戦に入りました。
接戦だったこともあり、それまでに、作戦の中で選手の交代も多く、
野手もいなくなっていました。
事件は10回の裏に起きました。
1アウト満塁。
サヨナラのチャンスで迎えたバッターが、ショートライナーを打ちました。
その時に、少しだけ飛び出してしまった1塁ランナーのブラゼル選手戻れず、ギリギリアウトになってしまいました。
その当時は今でいうところの『リクエスト』もなく、
アウトになってしまったブラゼル選手は、1塁塁審に激しく抗議をしました。
その抗議をしたことにより、ブラゼル選手は退場処分を受けることになってしまいました。
その時、阪神ベンチに残っている野手はいませんでした。
私はその光景を、控えているブルペンから見ていました。
心の中で「野手がいなくなってどーするんだろう?」
と思っていました。
すると間もなくブルペンにベンチからの内線電話がかかってきました。
その電話はリリーフ登板を告げる電話ではありませんでした。
電話を切ると、投手コーチの方が、
「西村いってこーい」
と、半笑いで言われました。
私は、まさかと思いながら、とりあえずベンチに向かいました。
すると、野手のコーチの方々が私を待っていました。
そして、「飛んでいかないように考慮するから外野に入ってくれ」
と、言われました。
その瞬間は冗談かなと思いましたが、
時間が経つにつれ、秒単位でそれが現実だということに気付き始めていきました。
よく分からない大歓声に迎えられ、ライトの守備位置につきキャッチボールをしてる時に、
「ライト 西村」
と球場にコールされ、電光掲示板にも、
西村の文字の上にライトの守備位置を示す『9』の文字が輝いていました。
私は、その時も不思議と緊張はしていませんでした。
「外野なんて久しぶりだなー。打撃練習で守ったこともあるし大丈夫だろう」
と思っていました。
しかし、その自信も一瞬で打ち砕かれました。
プレイがかかり、試合が始まって間もなく、
私のほうにフライがいきなり飛んできました。
私はドキッとしてボールを探しました。
その打球はなんと、バックネット裏に飛んだ、ただのファールフライでした。
そんな打球に慌てて反応してしまった恥ずかしさと、
経験したことのないナイターゲームでの外野の守備のボールの見えづらさ。
それに加え、プロの打球と考えると、
「これはやばい」
と、冷や汗をかいたことを今でも覚えています。
その瞬間から一気に不安になり、ドキドキしていました。
監督やコーチの方たちが考慮してくれたおかげもあり、打球が飛んでくることはありませんでしたが、
結果2イニングを守らせてもらい、最後は打席にも立たせてもらいました。
その考慮とは、
球が速いピッチャーの方が投げていたので、
バッターに引っ張られることはないだろうということで、
右バッターの時はレフト。
左バッターの時はライト。
を守るということでした。
なので、レフトとライトを行ったり来たりしていました。
その時のファンからの「いってらっしゃーい」「おかえりー」
の声援は、関西ならではだなーと、笑ってしまいました。
もちろん守りについているときは、守備に集中はしますが、
この時私の頭の中は、いろいろなことを考えていました。
当時、不動のポジションであった、
「ここが、金本さんが見てた景色かー」
とか、
当時、実の兄が外野手としてプロを目指して独立リーグでプレーしていたので、
「兄ちゃん、俺先に外野守っとるよー」
とか、
「野手は1球1球かまえるの、疲れて大変だなー」
なんかを思っていました。
その中でも、1番思っていたことは、
「あのマウンドでこの場面、自分が投げたかったなー」
でした。
シーズン後半、思うような投球ができていなかった私は、
外野を守る選手に選らばれて光栄なこともありましたが、
それ以上に悔しく思っていました。
大事な場面で投げたい。
チームにピッチャーとして貢献をしたい。
そんな気持ちで、外野の守備についていました。
これが『外野 西村』の内容です。
その当時は複雑な思いでしたが、
今となってはいい経験ができたなと思いますし、
このおかげもあり、皆さんに名前を覚えていただいたのも確かです。
なので今はいろんな意味で感謝しています。
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2010年の成績は、
65試合 7勝3敗14ホールド 71.2回 72安打 13四球 71三振 31失点 防御率3.89
という成績でした。
決して自慢できる数字を残したとは思いませんが、
この当時、少なからず自信になったことは間違いなく、
もっと活躍したい、もっといい数字を残したい。
と、より前向きに思えたことも確かでした。
そして何より、1軍にいることが、
こんなにも刺激的で、何よりも楽しくて、何よりも幸せで、
どんなことよりも充実感があって、
私自身、かつてない興奮を覚えるものでした。
野球人として、
野球は、人生そのもの。
という言葉がありますが、
その言葉がまさに自分自身の中に生まれた瞬間でもありました。
好きで始めた野球。
時には嫌いになることもあり、
嫌らわれることもあった。
それでも野球から離れることはできず、
野球を愛して、追い求め、
出した成果でプロの世界に入り、
私が表現する野球を、
数万人の人が見て、
応援をしてくれる。
野球人として、こんなにも幸せなことはほかにない。
そう思える1年でした。
そして1軍はそんな気持ちになれる場所でした。
なので野球をしている子供たちやアマチュア選手たちは、
ぜひともプロを目指して頑張ってほしいと思いますし、
その中で戦いに勝ち、華やかな舞台で野球をしてもらいたいと思います。
それと同時に、
改めて、この場をお借りして、応援してくれている方たちに感謝の気持ちを伝えたいと思います。
本当にありがとうございました。
そして、図々しいですが、
これからもよろしくお願いします。
【阪神タイガース時代】
ディスカッション
コメント一覧
この年のGWの試合見に行きました。
これを見てますます好きになりました!
東京から行って良かったと今でもすごく覚えてます。
外野守ってた試合はテレビで笑ってしまいましたが頑張れー!
て思いましたよ。
最後打ってくれるかなーとか思ってたけど確か新井さんが盗塁でアウトになって終わりましたよね。笑
あの頃のタイガースの方が見てて面白かったなー。
コメントありがとうございます。
よく覚えてくださってますね。
嬉しいです!
また少しずつですが書いていくので
これからもよろしくお願いします。