「メンタルコントロール」

これは私が社会人チームで投手コーチをしていた時のお話である。

当時キャプテンをしていた責任感が人一倍強い選手から相談を受けた。
そんな相談のおかげもあり、

勝負ごとにおいて、試合前のマインドセットを学ぶこととなった。

そんなにやり取りを共有しようと思う。

その相談とは、

「この大会、絶対に勝って全国大会に行きたいです。何かアドバイスが欲しいです」

というものであった。

これを相談と捉えるのか、ただの意気込みと捉えるかは人それぞれである。

「そうだな!頑張ろう!」答えてしまえばそれまでであった。

しかし当時の私もその選手と同様にその大会で良い結果を残したいと強く思っていたので、

そんな率直でストレートなこの相談を私なりにしっかりと受け止め真剣に向き合うことにした。

その大会で勝つ方法を明確に見出したいという思いであった。

試合で勝つための方法といっても実際に戦ってみなければ勝負の行方はわからない。

それは至極当然なこと。

しかし、傾向と対策、予習があるように、

本番を前に戦略的、作戦的自信をつけておくことは最低限必要なことだと考える。

どうにかその選手を救えるようなアドバイスをしてあげたいと思った。

今でもはっきりと思い出せるほど、

その選手はメラメラと燃えるような目で私をまっすぐ見つめ、

「絶対に勝ちたいです」と言う。

私も以前は現役でプレーをしていたからこそそんな気持ちは痛いほどわかる。
同じようにメラメラと闘志を燃やし、大事な試合に臨んだものであった。

当時の自分が経験してきた失敗体験も踏まえ、

勝ちたいと心から望む選手にアドバイスの言葉を探す。

その選手に尋ねてみる。
「勝ちたいという気持ちは十分に伝わったが、どうすれば勝てるのか作戦や方法はイメージできているか?」

すると、

「しっかりと体の準備はできているが、さらに勝ちに近づける「何か」が欲しい」との事だった。

勝負に入っていくコンディションの準備は整っているが、

何か少しでも、ほんの少しでもいい。
自信になる「何か」がもっと欲しい。
そんな自信はあればあるだけいい。

備えあれば憂いなしである。

裏を返せば、

準備ができたと思ってしまうことすらも油断になってしまうのではないかと、

切迫しているようにも見えた。

そんな状態の彼に油断とは違う本当の余裕、自信になる考え方を伝えた。

「勝ち方を考えるんではなく、負けない方法を考える」

試合という特殊な舞台では色々なことが起こる。

想定していたことが起こらないのが試合である。

その時に冷静に判断ができる事、臨機応変に状況に応じた対応ができるかどうかが勝負のカギを握る。

メラメラと闘志を燃やし試合に臨み、その勢いそのままに試合を制することができたらいいが、
ただの感情論や根性論、勢いだけのチームが勝てるほど野球は甘くはない。


だからこそ一度冷静になりしっかりと自分の足元を見つめなおすことが大切な要素であった。

彼に言った言葉はどちらも同じ意味。

「勝つこと」と「負けないこと」

しかし目標に向けてのアプローチの仕方や角度が変わってくる。

ただ勝つために物事を考えると、その一方方向でしかアイデアが浮かばなくなる。

試合に置き換えれば、

ピンチの展開、ビハインドしている状況での戦い方は想定外となる。

もちろんそうなってしまえば終わりというわけではないが、

そんな展開でのボルテージのコントロールはできなくなるだろう。

負けないための方法を見つけておけば、

万が一ビハインドしている場面でも逆転のイメージができる。

傷口を広げない対策も打てる。

大前提で、勝負に勝ちたいと思う気持ちは必要である。

その比重のコントロールにフォーカスをすることである。

勝ちたい気持ちと、負けたくない気持ちを使い分ける。

勝負のターニングポイントを両面から見極める。

その強さに気付いてもらいたかった。

負けない対策のもと、インパクトの瞬間には勝ちたい気持ちを爆発させる。

勝負に勝つイメージは時にパフォーマンスを邪魔するときがある。

負けのプロセス。

負けたときのパターンを洗い出し、

同じミスを繰り返さないこと。

それは自身の経験だけではない。

野球の長い歴史から、起こりうる負けのパターン。

そんなことも学び準備をしておくことが大切である。

これまでもこれからも常々言うであろうワードにはなるが、

「表裏一体」

野球から人生を学ぶ。

野球も9イニングの裏と表、

攻めと守りで勝敗を決する。

楽な時もあれば、苦しい時もある。

良い流れの時間もあれば、悪い流れの時間もある。

表に問題があれば、実は答えはその裏に隠れている。

今回のお話もその一種である。

勝つ方法が知りたければ、負けない方法を考えてみる。

野球だけではなく、

色々な環境や場面に当てはまるお話ではないだろうか。

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