「ピッチング革命 case1」

これはとある豪速球投手とのお話。

「ストレートを投げさせたら150キロを超えるがコントロールが悪い」
自他ともに認める評価であった。

この投手は悩んでいた。

コントロールをよくしないと試合に使ってもらえない。
自慢のストレートを持っていながらもストライクが入らない。
試合で投げれば四球を連発し、自滅が原因で試合を壊してしまうこともあった。
悩みに悩んだ結果これという答えも見つからず、

挙句、試合で投げることも怖くなっていた。

その選手に声をかけてみると返ってきた言葉は、
「僕はコントロールが悪いんで、自信がありません」

胸が痛む言葉であった。

その選手の練習を観察してみることにした。

キャッチボールを見ていても、人一倍離れた遠投を行う。
距離が近くになりおよそ塁間でのキャッチボールでも、

もの凄い球を投げ、キャッチボール相手が可哀想になるくらいであった。
そしていよいよブルペンに入り投球練習を開始。
立ち投げからキャッチャーを座らせてピッチング練習をしてたのだが、

本人が言うほどの制球内容でもなく、強く良い球を投げ込んでいた。
後日、実践練習が行われた。
打者との対戦形式にその投手が登板することになった。
すると、突如としてストライクが入らなくなり、

稀にストライクゾーンにいく球といえば、150キロ超が陰を潜めた置きにいった弱い球。

その球を痛打されるというシーンを見ることとなった。

その登板を見ていて、

ある心理がこの選手を苦しめているんじゃないかと推測した。

登板後の投手に声をかけた。
「今日の登板はどうだった?」
「ストライクが入らなくて、(ストライクを)取りにいったところを打たれました」
ピッチャーが打たれる典型のひとつ。

ここで、気になっていたことを尋ねてみる。
「どこを狙って投げてる?」
すると、「アウトローです」。
想像通りの答えが返ってきた。
投手としてはある意味100点満点の答えである。
しかし、この投手にはその答えが心理的にアンマッチだと感じていた。

その考えを伝えるために行ったアドバイスは、
「アウトの取り方、バッターの抑え方は種類があり、それは、三振、フライアウト、ゴロアウトの3種類。
君の球速や力があるのなら、その中でも三振とフライアウトを狙えばいいんじゃないかな?」

「だからコントロールができないアウトローを狙うのではなくて、真ん中から高めのストライクを狙っても投げることをお勧めする」

「要するに、低めに生きる投手じゃなくて、高めで生きる投手であるということ」

その投手はそれ以降、

人が変わったかのようにストライクを先行させ、バッタバッタと相手打者を持ち前の力でねじ伏せていった。
その結果、大事な大会にも登板させてもらえるほどの戦力に成長し、

大会の緊張感やプレッシャーも、自信というパワーで吹き飛ばし抑えることができるようになった 。

改めて指導の面白さと奥深さに触れることになった。

投手のコントロール基本といえば原点(アウトロー)の制球力。
その投手も、もちろんその事を知っていて、そこを目指して頑張っていた。
しかし、その固定された考え方が結果的にその投手を苦しめてしまっていた。
その選手の強みは150キロを超える強いストレート。

長所と短所の話でいうと、
今回この投手は短所だけに目を向けて、

そこを埋めようと必死に努力をしていたが、なかなかクリアすることができなかった。

短所に向き合うというプロセスは決して間違いではない。

短所を克服すれば長所も伸びていく。

しかし、短所を克服することは容易ではない。
今回のケースではその投手が持っている圧倒的長所を利用して短所を埋めるという方法であった。

制限をかけて苦しい思いをするのではなく。

もともと持っている力を使って問題をクリアしていく。
自分の武器を知り、その武器を上手に使う。
選手たちの可能性を探ることが本当の指導なのではないだろうか。

ちなみに、それ以降その投手は、

苦手だった低めのコントロールも良くなり、変化球の制度も上がっていった。
苦手だったコントロールが得意に変わり、

活躍するシーンが増え、グラウンドに出てくることも楽しくなったとのこと。

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