「最新のトレーニング」

あるチームの臨時コーチをさせていただいた時のお話。
チームの投手を指導して欲しいとのことであった。
投手の練習を見ながら、投球フォームの技術的な修正点や意識するポイントなどを伝えていた。
その光景を側で聞いていた、そのチームの投手コーチを務める方からこう尋ねられた。
「投げ方やフォームの指導方法や理論は理解しました。では、その投げ方ができるようになる有効な練習方法やトレーニング方法はありますか?」
私はこの手の質問をこれまでもたくさん受けてきた。
「何かオススメの練習はありませんか?」
「新しいメニューを教えてください」などである。
選手は次から次へと新しいものを入手したがる。
それは道具や器具にはじまり、
新たな技術理論や最新のトレーニング。
向上意欲があることだけは評価に値する点であるが、
その反面「継続する能力」に欠けていると感じるときがある。
「継続は力なり」という言葉の力も薄くなっている現状なのかもしれない。
今やトレーニングメニューや練習メニューは、少しネットで調べただけでも無数に出てくる。
丁寧に動画付きのものもあり、
選手はもちろん指導者もそういったツールで情報を入手しやすい時代である。
その投手コーチからの質問に対しての私の答えはこうである。
「新たな練習メニューに変える必要はありません。変えるのは「意識」です。今行っている練習は正しい。その中の意識を変えるだけで全く新たな練習になるはずです」
簡単に手に入る情報がたくさんある事によって、
「新しい情報=正しい情報」と捉えている人間が多い。
本当に正しい情報というのは自分に合った情報、
自分にとってプラスになる情報の事である。
中には「調べる事までが努力」となっている人間も少なくはない。
現在行っている練習や毎日の練習はなぜ行っている事なのか、その積み重ねを信じることができているか。
積み重ねそのものを実感しているか。
積み重ねを実感しているからこそ、その良し悪しの判断ができるもの。
新しい事を取り入れる事はまったく悪い事ではない。
しかし、努力の成果とルーティンとは全く別のものである事を理解しておかなくてはならない。
自分と向き合い、本当に必要な事を見極める。
周りにあるもので満足をするのではなく、自発的に物事を捉える。
より良い反省をするためにそのプロセスを大切にする。
実際にプレーする選手も、その選手を教える指導者も。
今一度現在チームで行っている練習の意味をお互いに共有し、その取り組みの意識を高める事を目指してみてはいかがだろうか。
選手に質問をされたらコーチは新しい事を答えなければいけないわけではない。
もちろん選手たちのリアクションは良いものではない。
しかしその選手、そのチームに本当に必要な事は何かを考える。
その説明を理解するまで伝える。
勇気と忍耐力、そして自信を伝えることも指導者としては大切な能力である。
臨時コーチをさせていただいて直に肌で感じることができた貴重な体験談であった。
