「意識と無意識」

前回、プレッシャーとの付き合い方についてお話しをした。

プレッシャーの正体とは、自身が「未熟」であるということ。

当時かかりつけだった整形外科の先生に言われた言葉。

「プレッシャーを感じて力むということが理解出来ない」

「プロならプレッシャーで力むということはあってならない」

ミスが許されないドクターの世界に居るからこそ言える重たい言葉であった。

プレッシャーで力みミスをすれば医療ミスで大問題となる。

業種は違えど、プロはプロ。

野球のプロと、医者のプロ。

プロはミスをしてはいけないのである。

本当にプロと呼ばれるようになるにはその先生のような領域に踏み込んでいかなくてはならないのである。

プレッシャーを感じる場面とそうでない場面をイメージしてみる。

言葉で表すなら「本番」と「日常」ではないだろうか。

例えば、歯を磨く行為で緊張する者はいるか。

自身の部屋のドアを開ける時力む者はいるか。

何千回、何万回と繰り返してきたからこそ、

自身の身体に刷り込まれた動きとなっている。

これぞプレッシャーがないパフォーマンスの正体でもある。

この関係には「頭」が大きく関係する。

以前私が実際に行ったチームミーティングのお話しをしようと思う。

その時のチーム状況は、「ミス」をきっかけに敗戦が続いていた。

ホワイトボードに「試合」と「練習」、

それぞれの横に「成功」と「失敗」と書き出した。

そして選手たちに問う。

「試合で体験したいのは「成功」と「失敗」どちらか」

当然選手たちは「成功」と言う。

では残された「練習」と「失敗」をペアにする。

要するに、

「試合で成功」したければ「練習で失敗」をしなければならないということ。

今みんなはこれが逆になっていないだろうか。

「練習で成功」ばかりしているから「試合で失敗」することになる。

勘の良い選手はこう言う。

「どちらも成功できればいい」

ごもっともである。

練習で納めた成功を、いいイメージを持って試合で再現する。

しかし、これができないのが本番の試合である。

その理由を説明し、現状を深掘りした。

一人の野手に尋ねてみた。
「三振をした時の記憶と、ホームランを打った時の記憶、はっきりと球種まで映像で覚えているのはどっちか」
すると、「三振」と答える。
実はこれが「成功」と「失敗」の記憶の関係である。
人間は成功よりも失敗の方が深く記憶されるものである。
「失敗」=「記憶」(インプット)となる。
続けて、
「力み」と「リラックス」では、
どちらが失敗した時の言葉かと問う。
もちろん「力み」である。
そして、
「意識」と「無意識」では、
どちらが「力み」で「リラックス」か、
「意識」=「力み」、「無意識」=「リラックス」である。
この言葉を全て並べて書き出した。
「試合ー表現(アウトプット)ー無意識ーリラックスー成功」
「練習ー記憶(インプット)ー意識ー力みー失敗」
試合で成功をしている時の状態。
その状態で試合に臨むには、その反対のことを練習でしておかなくてはならないということ。
その関係性は裏と表。
9回を戦う野球のルールと同じことである。
表の問題の答えは裏にある。まさに表裏一体。
試合でリラックスをして結果を残せる選手は、
練習で高い意識を持って力みたくさんのミスをしている選手である。
楽しく意識もせず練習をしている選手は、試合で力みミスをするのである。
どちらでも成功をすればいいという意見もあるが、

本当に高い意識を持っている選手というのは、練習で簡単に成功を見出すことはない。

要は満足をしないのである。
さらに上、さらに先へと目標を更新していく選手である。
プロはミスをしないほどに回数をこなしている。
今の自分がそんな回数こなせない。時間もなければ環境もない。
そう嘆く選手たちも、練習の仕方、考え方を変えると良い。
「意識」と「無意識」をコントロールする。
練習中にはすべての動きに意識を持ち体現できるよう努力をする。
とことん自分と向き合い練習をすることで、試合で自分と向き合わなくて済むようになる。
自分のことは無意識で相手に集中することができるのである。
無意識の状態を作ろうと努力をするのではなく、日々の努力で無意識を引き出す。

試合で大切なのは、相手に集中すること。
相手に勝負のベクトルを向けることである。
相手の行動を観察し、勝つ方法を見つけること。
ベクトルが内側を向き自分と向き合えば、試合でパフォーマンスを出すことはできない。
相手を細部まで観察し、環境や状況を把握し、その場面での最善策を見つけ出す。
本番で大切なのは、「思い出す」ことではなく「閃く」こと。
本番でプレッシャーを感じるという時点で、自身のメンタルにベクトルが向いている証拠である。
自分の能力に自信を持ち、
日々、意識してきた鍛錬を信じ、
自然体の自分を信じること。
そして目の前の勝負にだけ集中をする。
これがプレッシャーを感じないプロのプレースタイルである。
本番で「無意識」というプレゼントをもらうためには、
普段から楽をせず、苦しい日々を自らで作り出す事。
楽しくない日々を根気強く過ごし練習に取り組むことができる選手は、

本番で楽しい思いができるということである。
そんなプレイヤーこそが、本物のプロフェッショナルということである。

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