「ピッチング革命 case2」

これは私が投手コーチをしていた時のお話。
ある投手からこんな相談を受けた。
それは、投球フォームに関しての相談。
自身で色々と試行錯誤して、それでもなかなかうまく行かないという状態であった。
その投手のことは本人の努力も含め観察していたので、
行き詰って相談をしてきたタイミングで適したアドバイスをした。
すると、その投手はすぐに感覚を掴み手応えを感じてくれた。
ひと安心していた時に、
「自分の考え方が間違っていましたね」と呟く投手。
この言葉に引っかかり話を続けることにした。
自分自身の考え方を頭ごなしに否定してほしくなかったからである。
「全く間違いではない。そもそも自分自身から生み出されたアイデアには何一つ間違いはないと思ってていい」
これまでの自身の経験を無駄にしてほしくない。
この投手は、試行錯誤して頑張っている姿も見ていた。
その頑張りがあってこその今があるのだから、そこを切り捨てて考えてほしくなかった。
失敗も成功も、全てが意味を持ち形成されていくものが未来。
せっかくの経験を間違いとして受け止めてほしくはなかった。
話を続けた。
「本当の間違いと言うのは、同じミスを繰り返すこと。そして他人から言われたことを鵜呑みにしてそのまま実行すること。そして無理だと決めつけてチャレンジしないこと。だと思う」
こんな考え方がある。
「ミス=成長」
これは野球の神様、野村克也氏の言葉。
「失敗と書いて成長と読む」と同じニュアンスなのだが、
私自身もその言葉を自分なりに理解しているつもりであった。
例えば毎日の練習や試合で、調子がいい日や悪い日がある。
調子のいい日は気分も良く、野球以外のことを考えたりもする。
心の余裕からだろう。
今日は何を食べようかな。
息抜きに何かしようかな。
しかし、調子が悪かった日。
そんな日は逆に野球のことばかり考える。
悔しい。
どうすれば勝てるのか。
どうすればうまくいくのか。
頭の中は野球で満たされる。
ミスをすることで人間は反省をし努力をする。
要するに、
ミスをすることは成長につながる大切な要素だということ。
試行錯誤のプラスのサイクル。まさにトライアルアンドエラー。
様々なことにトライしていくことがどんな意味合いを持つか。
たとえ失敗したりミスをしてしまったとしても、
そこでしっかり反省をすれば成長につながる。
結論、「可能性」しかないということになる。
その投手が呟いたたった一言がきっかけだったのだが、
その危険なマインドを受け流すことができなかった。
パフォーマンスを出すために必要な要素。
それは「自信」を持ってプレーする事。
文字通り「自分を信じる」こと。
選手が秘めている可能性。
この可能性を生かすも殺すも選手の気持ち次第。
選手のメンタルはとても繊細で取り扱いの難しい部分ではある。
しかし、共通して伝えることができるアドバイスもある。
それは常に前向きでいること。
後ろ向きな考え方は損をするということ。
常に前。常に次。
起きたことは良くも悪くも受け入れ、そして反省を繰り返す。
誰にも止めることのできない時間なら、それを上手に乗りこなす。
時間の経過はこの世の定め。
ならば、
過去は戻らないと、悲観するのではなく、
「その過去があるから今がある」と胸を張り、
楽観できる未来を作るための行動をする。
そういった気持でいるだけで、見える世界が大きく変わってくるのではないだろうか。
「失敗=成長」
この魔法の言葉を持ってさえいれば何をすることも怖くなくなる。
失敗すると大きく落ち込み、
嫌なことがあると長く尾を引き、
楽しいことはないものかと受け身の姿勢で待ち続ける。
何も変化のない日常に考えることといえば、
「あの時こうしておけば」と後悔ばかり。
後ろばかりを見ては、
その場の居心地に甘んじて長居をする。
残念ながらそこには成長はない。
待っているのは、
成長スピードよりも時間の経過が早いという虚しい人生。
変われるチャンスはいくらでも転がっている。
気づき、行動をした瞬間。
そこがチャンスのきっかけである。
まずはやってみて、その先々で思うこと感じることを大切にする。
たとえミスをしても、その判断が間違えていたのかもと思っても、
その経験を得ることこそが、成長につながる大きな要素。
時間がないから失敗できない。
遠回りしたくないから正解を知ってからやりたい。
わからなくもないが、誰も正解なんてわからない。
自分の都合のいい御託を並べる事に時間を使うなら、前に進む時間に変えればいい。
チャレンジをしない事は、成長するチャンスをも逃しているということ。
現在、後ろを向いてても下を向いててもいい。
その過去も受け入れ、全て意味があるものに変えていけばいい。
今この瞬間を人生の分岐点と位置付け、
これから先は、
前を向き、上を見上げる人生に変えて行けばいい。
何も遅くはない。
気づいた時がスタートライン。
気づいたもの勝ちです。
自分から生まれた考え方に間違いはない。
自分から出た言葉に間違いはない。
自分から踏み出した一歩に間違いはない。
物事にはすべて理由がある。
無駄なことは何ひとつない。
無駄が唯一あるならば、それは、自分を疑うことである。

